FACTORY
工場

「タテ」と「ヨコ」を織りなす織機たち

The Three Pillars of MADE MILL 681

MADE MILL 681をつくる三大織機

01.

POWER LOOM

力織機

効率よりも味わい深さを求めて
今に伝える、古き良きものづくり

手織機しかなかった18世紀の英国で生まれ、その後日本へと伝わったとされる機械動力式の織機。クラッチによってクランクシャフトへと動力を伝えて駆動するその仕組みはクラシックカーのエンジンにも通じるものがあります。植山織物で現在稼働している力織機はすべて豊田自動織機製のもので、同社の創業者は緯糸がなくなると自動で補給する自動織機を発明したのが豊田佐吉です。シャトルと呼ばれる木製の道具によって緯糸を通し、生地を織り上げていくのが力織機の最大の特徴で、生産時に縦糸にかかるテンションが弱いため糸が痩せず、ふっくらとしていて凹凸のはっきりとした風合いの良い生地を織れます。また、緯糸を断ち落さずに織り上げていくことで、生地の両端にセルビッジと呼ばれる耳が付くのも昔ながらのこの織機ならではです。カードと呼ばれる穴の空いた板状の部品によって織り柄を調整する仕組みで、そこから生まれるテキスタイルの風合いの良さにはヴィンテージフリークだけでなくデザイナーにもファンが多いです。しかし、最新鋭の織機の約1/5程度のスピードでしか生産できず、メンテナンスにも多くの手間を要するため、現在では淘汰されつつあります。植山織物は、デニムメーカー以外で力織機を稼働させ続けている数少ない織布工場のひとつです。

02.

RAPIER LOOM

レピア織機

緯糸の自由度の向上によって
さらに広がった色柄の表現の幅

無杼 (むひ) 、つまりシャトルを用いない織機で、力織機の課題だった生産速度を解消するために開発されたものです。レピア(中世ヨーロッパで用いられていた細身の片手剣に由来する)と呼ばれるロッド状の金属パーツが左右に2つ並び、それらが緯糸を受け渡すようにして生地を織り上げていきます。緯入れされた糸はその都度エッジをカットされ、また新たな糸を通していくため、ひとつのテキスタイルに複数のカラーの緯糸を組み合わせて使用することができ、例えばタータンチェックのように複雑で多彩な色柄も表現できるのが大きなメリットです。柄調整はカードを使って行うというアナログな仕様は力織機と一緒で、植山織物では最大8色の緯糸を使って柄を表現できるため、様々な色彩・表情の生地が生産可能です。レピア織機のルーツはドイツにあり、1925年には試作され、1965年には日本国内でも生産されるようになり、今現在も活躍を続けている。実際に機械の側に立つと、ガシャンガシャンと音を立てて織り上げていく力織機に対して、シャッシャッと小気味よく続くレピア織機の駆動音はスムーズな生地の製造を実感させてくれます。

03.

AIR JET LOOM

エアジェット織機

目にも止まらぬ速さと精密さ
両方備えた、現代織物の主流機種

ノズルから噴き出す空気の力によって緯糸を飛ばし、超高速で生地を織り上げていくコンピューター制御の織機です。生産速度だけでなく、柄の指定も同様にコンピューター画面上の操作で行えるので狂いがなく、上質な生地を安定して生産できます。先の2織機が縦糸にテンションがかかると生地を送る仕組みだったのに対し、エアジェット織機では圧力センサーが設けられ、縦糸の張り具合をモーターによって管理しているため、生地の密度や織り目にムラが出ず、常に均一な状態を保てるという仕組みです。この織機を挟むような形で天井から床に向かって巨大なダクトが配置され、それらが常に左へ右へと往復して動いているが、これは肉眼では追えないほどの速さで生地が織られていくその高性能さゆえ、摩擦が生じた糸から出る風綿と呼ばれる細やかな塵を吸い込み、生地への混入を防ぐために据え付けられたものです。緯糸を安定して通すために縦糸には常に一定以上のテンションをかけてあり、高密度で表面がなめらかなファブリックが織れるのも利点です。植山織物ではそうした生産する生地の特性によって旧式の力織機やレピア織機とともに使い分けています。